リーダーシップとニューサイエンス
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「リーダーシップとニューサイエンス」の読書会をして思ったことを何回かに分けて書いてみます。

今回はこの本の「はじめに」のところを取り上げます。

今年も地震やら猛暑やら大雨やらと、日々何か予測も出来ないようなことが起こっているような気がします。
確かにね。何か昔はもっと「予測」が出来たような気がしますね。
今日は昨日とあまり変わらないし、明日は今日とあまり変わらない。
予定を立てたり、計画を立てたりして、そしてその通りになるように「管理」出来ることが有能な証だと思っていました。

でもねえ。振り返ってみるとそうだろうか。
計画を立ててもなかなか計画通りには行かない。期待を裏切られることは多いものです。
そうなんですね。実際はそうそう上手く行かないものです。

筆者は「古い地図に頼っていては今日の世界の状況に対処出来ない」と言ってます。
だから、この「新しい地図」としてニューサイエンスの知恵を見てみようと言うことですね。

考えてみると、僕らは物理の時間に習ったニュートン力学と因果律を使って「管理」しようとしてきました。
物事を部分に分け、測定し、外部に作用する力の直接的な結果が予測可能だと期待し、複雑な計画を立てることに勤しんできました。
混乱を静めて秩序を作る。変化を制御し、変化が出て来ることを恐れ、変化が出てきたらそれを押さえ込もうとしてきました。
しかし、この本を読むと「変化と秩序」「自立と組織化」は対立した概念では無いことがよく分かります。
変化があるからこそ秩序が生まれ、自立するからこそ組織化が起こる。ニューサイエンスを通して、そんな世界が見えてきます。

「この世界には新しい種類の自由がある。結論よりも探求に価値があり、知ることよりも驚くことに満足があり、じっとしていることよりも何か探索することにワクワクする。そんな自由だ。ここでは確実さでは無く好奇心がより重要だ」

著者のこの言葉に触れたときに、僕が連想したのは「形式論理」と「状況論理」と言う言葉です。
甲南大学の加護野先生がアジアでの日本企業の活躍について書かれた「日本型経営の復権」という本の中で知った言葉なんですけどね。
日本人は説明をあまりしない。マニュアルを事細かに書かない。そういう日本流のやり方をアジアに持ち込んだ。
何かこう、分析して説明するような「形式論理」では「ものづくり」は伝えられない。現場で起こるさまざまなことに対処するには言葉では説明しきれない「状況論理」が必要で、それは現場でないと伝えられない。
あるいはニューラルネットのようなパターン認識のAIなんかもそうかもね。ロジックで無く経験から学ぶ。パターンを分解するのでは無く全体から押さえていく。

全てが既知であるかのように仮定して誰にでも対応出来るようにマニュアル化するというやり方ではなく、状況の中で全体からの発見と驚きの体験から学ぶことが、大切なんだと言うことは、実は日本では当たり前のことだった、それが失われつつ有るんじゃないか…そんなことを考えます。
確かにマニュアル化することで労働者を取り替えることの出来る部品と考えることは効率的なことなのかも知れません。僕らはそんな「賢い」組織を夢想していたのかも知れない。
しかし現実には、僕たちは個々の人間が個々としてもっと認められる組織を作ってきたし、作る能力を持っているんだと言うことをこの本から感じます。

「客観的な現実などない」「一人一人にとって全てが常に新しく、特異で、ユニークなのだ」「私たちはお互いに関わり合い、自分たちにとって何がうまく行くかを見つけるために実験し、真の発明者としてお互いを支えなければならない」

絶えず変化して固定することの出来ない世界では「再現性」を信じるわけには行かない。昔こうだったからこうなるとは言えない。
そう言われると頭を抱えたくなる自分を感じることも無いわけではありません。
でもそこに何かの可能性。さまざまなアプローチがそこにはあって、決まったアプローチが有るわけではない。そんなことも感じます。

「ニューサイエンスとニュートン主義の決定的な違いの一つはニューサイエンスが部分よりも全体性を重視していることだ」
システムを全体として理解し、「もの」よりも「ものとものとの関係性」に注目する。このアイディアはこの本を通して何度も考えさせられます。
ある意味、仏教的なニュアンスも感じます。
関係性の中の自己、場の中の自己。そういう「自己」を捉えたときに、今まで教わってきたような「自己の独立性」のようなものを少し考え直してみたときに、これまで学んできたものがパーッと開けてきたように僕には感じられました。

「関係」と言う問題をニューサイエンスから見直す。なんてアイディアは、僕にとってはとても興味深いものでした。
ビジョンや価値観と言った聞き慣れた言葉の新しい見方がこの本では紹介されています。これはとても魅力的なものです。

組織は生きている。生命体の性質から組織を見ることは、僕にとっては新しい視点でした。
「自己組織化」という言葉を僕は「自律」と言った言葉と混同していたのですが、「生命体」という視点から、やはりそれは「組織化」であって、組織化と自律が矛盾しないというところのイメージが僕はこの本からおぼろげながらに理解出来はじめたと思っています。

ちょっと、思いを語ってしまいました。次回からはもう少し分かりやすく具体的な話が出来れば良いなあ………と思っています。

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