[新版]アフターショック―――変化の時代の「痛み」を解決する知恵
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「アフターショック 第4章 変化に対する四つの対応を見きわめる」のまとめです。

変化が起こった後の反応には、技術的な問題と情緒的な問題の二つがあります。
変化が始まると情緒的な問題は技術的な問題よりもずっと目立ちます。
技術的な問題が起こっているときでも、その背後にはたいてい情緒的な力が働いています。

技術的な問題は、ある程度予測可能で、計画の策定、訓練、客観的状況設定などによって処理出来ます。
情緒的な問題は、予測することが出来ません。変化しやすく不明瞭で時限爆弾のように不意に爆発することも多いです。
それに対処するには、時間、傾聴、カウンセリングなどが必要ですが、それらは変化の渦中には手に入りにくいものです。
そのために情緒的な問題は避けられたり無視されたりしがちです。

戦略レベルでは、トップマネジメントは変化の技術的側面に対して計画することが出来ます。
戦術レベルでは第一線の中間管理職が技術的側面と同時に人間的側面も扱います。

組織の多くの人は、対人関係の能力よりも、数字や結果ではっきり見える技術的な能力で昇進します。
その結果、最も必要とされる情緒的な問題は、管理職にとって最も経験の乏しい分野になります。
変化が来て情緒的な問題を扱う能力が必要になると、多くの人は不意を突かれ、未経験の領域に投げ込まれたと感じます。

組織は行動偏重になりがちです。
行動する前によく観察しなければなりません。端的に言えば、「解決を探すな。反応を見きわめよ」です。
まず、反応を注意深く観察することによって、解決のための最善のものを選ぶことが出来ます。

変化に対する四つの反応

ウィリアム・ブリッジスは変化に直面したときの反応を次のように分類しています。

  • 無関心:引きこもり(心ここに有らず)
  • 自己喪失:悲嘆あるいは憂慮(これでも昔は遣り手だった)
  • 方位喪失:困惑(自分の居場所が見つからない)
  • 憤慨:怒り(なんてひどい仕打ちだ)

最初にこのような反応をしたからと言って、それは異常な反応ではありません。
これらは変化をうまく乗り切るのに不可欠な反応です。
しかし、多くの人は、これらが正常な反応であると言う認識を持っていません。

このような反応をすると「そんなふうに思うものじゃない」「そんな態度だから出世出来ないんだ」と言われてしまいます。
そのため、自らの感情を隠したり、否定したりしてしまいます。

無関心(引きこもり)

会社が社員の創意を喚起しようとすればするほど、変化を受け入れて積極的に取り組めと言えば言うほど、そう出来ない社員はますます落ち込んでいきます。
こうなると社員のエネルギーを新しい方針に向けされるどころか、生き残りと自己憐憫の思いにとらわれ続ける社員の群れを生んでしまいます。

職場での無関心は変化に対して身を引いたり、興味や自発性を失うという形で起こります。
無関心を決め込んでいる最中には仕事に時間を費やしてはいても、かつてのような情熱や気持ちを注ぎ込んでは居ません。

無関心な人全員が引きこもり症状を呈するわけではありません。
表面的には懸命に働いていたり、明るく振る舞っているように見えることがあります。
むしろ、保身のために仕事に専念しているふりをしているかも知れません。

無関心な人びとは、本来なら変化に適応し、変化とともに動くために用いられるべきエネルギーを孤立のために使います。
無関心な人びとは、自分を仲間から孤立させ、仕事上の責任を回避することに自分のエネルギーを使い切ってしまいます。
活動に巻き込まれれば、それだけ自分たちの失望と敗北感が増すのではと恐れるのです。
彼らはいつも元気がないように見えますが、内側では自分のエネルギーが生産的なことに消費されるのを避けようと、ものすごいエネルギーを使っているのです。

無関心な社員の特徴

  • 出社はしていても退社している
  • 時間を掛けているが仕事に気持ちが入っていない
  • いつも低い評価を受けている
  • 積極的とも消極的とも取れない曖昧な態度
  • 変化について話したがらない。話題を変えようとする

典型的な態度

  • 目立たない
  • 最低限、求められたことしかしない
  • 肩をすくめる
  • 質問しない
  • 情報を集めようとしない
  • 討議しない

典型的な受け答え

  • とにかく目立たないことです
  • 問題ありません
  • どっちでも構いません
  • 何も新しいことはないですね
  • 自分の仕事はやりますよ
  • 何でも無いですよ
  • 私には関係ありません
  • 私は繋ぎですから
  • 四年か五年に一度有るんですよ

自己喪失(悲嘆あるいは憂慮)

自己喪失を経験している人は、自分の居場所をなくしているのだとブリッジスは言います。
自己喪失の状態にある人は、自分の所属を見失ったために、肩書き無しの自分がむき出しになり、無防備になります。

自分の扱う製品や担当区域を変えられた営業担当者、再教育を受けさせられる従業員、今までの同僚と働けなくなった仕事仲間。

人はアイデンティティを特定の仕事や場所、仲間、地位などから得ています。
これらの幾つかが変わるか奪われるかすると、単に仕事や仲間を失うだけではなく、自分自身が無くなったような感覚を持ちます。
そのため、過去への執着が強くなります。良き時代の思い出や安らぎ、帰属意識が得られるからです。

「私も昔は技術者として鳴らしたものだ。だが今じゃ誰にも見向きもされない」「あの頃は仕事も出来た。だが今は厄介者だ」「あの頃は本当に良い仲間が居た。だが今は俺を必要とする者など居ない」「以前は自分の仕事がよく分かっていて楽しかった。だが今は自分のやることがさっぱり分からない」

自己喪失で誰もが口にする言葉の前半部分は事実です。しかし後半部分は話している本人がそう思い込んでいることです。
まず事実の述懐が有り、論理的でない投げやりな言葉が続きます。こう言う非合理さは自己喪失に見られる特徴です。

すなわち、自己喪失は単なる落胆や心配以上のものです。理屈に合わないことがもっともらしく思えてくる心理状態のことです。
自己喪失状態にある人は無防備であり、実際に恐れから口にしたとおりのことを自らの身に招くことにもなりかねません。

変化に適応し、変化を克服するために使われるべきエネルギーが、自己喪失状態にある人の場合、過去に向かってしまいます。
その意識の中心にあるのは、かつての安定した仕事、職場、時間であり、その生き方は現在の事態の変化をまるで無視するかのようです。

自己喪失状態の社員の特徴

  • 思い出にふける
  • 拗ねる
  • 過去にしがみつく
  • 昔の仕事をやり続ける
  • 朝食や終業後の付き合いが昔の仲間に限られる
  • 新しいやり方、上司や仕事に反発する

典型的な受け答え

  • それはないよ
  • 私は相談されていない
  • 上手く行くはずがない
  • だからそう言ったじゃないか
  • 上手く行かなくても俺のせいじゃないよ
  • 私は関係ありませんからね
  • 今まで上手くいっていたのにどうして変えないといけないのかね
  • また一から出直しだ
  • 昔は…したもんだ

方位喪失(困惑)

方位喪失状態にある社員は、自分のエネルギーを「どのようにするか」ではなく「何をするのか」を決めるのに使い果たします。
この社員が心得ている自分の責任や優先事項、目標といったものは、今や過去のものになってしまっています。
会社や自分の部署では何が重要でどんな方針で動いているのか理解できず、自分だけが取り残された気持ちになっています。
何をして良いのか分からないとき、人はとにかく何かをしていること自体に意味を見出そうとします。
そこで方位喪失に陥った人は、細かいことにこだわり、やたら聞きたがり、情報を集めようとします。

このような人の反応は、質問や恐れや不満という形をとって表れます。
自分の質問に答えが見つかるまで仕事に全力投球できず、目標に自分の照準を合わせることが出来ません。

会社が定常期から統合期に移ると、慣れ親しんでいた場所から急に未知の世界に突入します。
このため定常期には安定していた目標は、リスクを覚悟した方向性を示すものに取って代わります。
「目標はこれだ。計画はこうだ」という管理の仕方は統合期には通用しません。

ここで求められるのは、管理能力ではなく、指導力です。
目標の文書化や実行管理よりも、ビジョンの創成、ビジョンの実現のために社員を動かす力が求められます。
比較的短期間の目標やステップの提示が中心になり、話し合いや意見収集が多くされるようになります。
目標や方向は誰かが決めてくれるのが当然と考え、定常期と同じ明確な目標を統合期にも期待するような社員は、あっさりと方位喪失に陥ります。
この期に及んでもなお、社員が明確な長期的指針にこだわり続け、トップも方針の変更を曖昧にし続けると、方位喪失状態の蔓延は免れません。

方位喪失状態の社員の特徴

  • 当惑
  • 自分の位置を見失う

典型的な態度

  • いつも質問ばかりする
  • 間違ったことをする
  • 他の人にも質問させるように仕向ける
  • 心配しすぎ、パニック状態になる
  • 細かいことを気にする
  • 他の人も巻き込んで仕事の手順に疑問を差し挟む
  • 何を優先すべきかの判断が付かない
  • 自分の疑問が解けるまで仕事を放り出す

典型的な受け答え

  • さて何をしたら良いんだろう
  • もう一度最初からやり直せって言うことか
  • 何を勉強しろって言うんだ
  • 一体どうなっているんだ
  • 何から手を付ければ良いんだ

憤慨(怒り)

ブリッジスは、憤慨している状態を住んでいる世界が現実のものでなくなったようなものだと説明しています。
過去に執着せず、ブリッジス流に言えば「理想の友や真の仲間、信頼出来る指導者」を探し求めたりしなくなると、人は次に進むことが出来るのです。

過去に執着しやすいのは、基本的にその人が被害者意識を持っているからです。
たいていの場合、憤慨の背後には無関心、自己喪失、方位喪失の感情が隠されています。
往々にして憤慨している人は自分たちの否定的な態度に賛同するように人びとに働きかけます。

憤慨状態は難しい問題です。しかし見方によってはそれほど大した問題では無いのかもしれません。
憤慨状態の人は、少なくとも自分の問題を表面に出して明らかにする傾向が有ります。

怒りを表しても良いという気風の会社では、彼らの反応は大した問題にならずにすみます。
怒りをタブー視する会社では、本来率直な人物も自分の反応を鬱積した形でひた隠しにし、中傷、陰口、サボる、と言ったより陰湿な形態でエスカレートさせます。

憤激している社員のエネルギーのはけ口は怒りや攻撃的行動、あるいは受け身的な態度に止まりません。
自分の邪魔をする障害物を排除することにも向けられます。
この障害物とは、慣れ親しんでいたものを奪われた恨み、信頼していた人を信頼出来なくなったことに対する恨み、意義有る仕事が今ではそうでは無くなったことへの恨みなどです。
ブリッジスが指摘するように、このタイプの人はある程度の時間を掛けてエネルギーを貯め、爆発させ、そして進み始めます。
しかし、この障害物が際限なく増え続けるとしたらどうでしょう。
「子供じみたことはやめろ」「やるのかやらないのかはっきりしろ」「ああ、言い忘れるところだったがこんな変更もあったんだ」
こう言った場合には、この社員は止めどもなく積み上げられる障害物に対する抵抗のエネルギーを貯め続けるだけです。

こうなると堰を切ったエネルギーが極端な個人攻撃に向けられたり、破壊行為に結び付くこともあります。
救済を求めても得られず、ついには恐ろしい復讐者に変貌します。

憤慨している社員の特徴

  • 表面的には否定的な態度
  • 憤りをぶちまける
  • 自らの問題を隠すために怒りを使う
  • 支持者を募る

典型的な態度

  • 声が緊張してうわずっている
  • 席を立つことが多い
  • 人が話しかけても答えようとしない
  • 自己憐憫に陥っている
  • 周囲の者を味方にしようとする
  • 陰口をたたく
  • サボりを決め込む

典型的な受け答え

  • 上手くいきっこないよ
  • こうなるなんて、自分には全く信じられないね
  • こんなところ辞めちまった方がマシだ
  • 奴ら今に後悔するさ

四つの反応のプラスの意味

これらの反応は必ずしも否定的なものではありません。変化に対するごく当たり前の人間的な反応です。
変化を肯定的に受け入れる人でも、ある程度はこのような反応を経験します。
これらは自然な当たり前の反応、健全で生産性を秘めた反応としてスタートします。しかしそれが長引き、この時期をうまく抜け出せないと問題が生じるのです。

無関心――現状把握の時間をもたらす

無関心状態に引きこもり、過去を振り返るのも貴重な才能です。
精神的な息抜き、考えをまとめる時間を持つことは、変化する環境では重要な自己管理術です。

自己喪失――過去の価値を継承する

変化しつつある状況では、過去のことを覚えていることはとても大切です。
現在の組織の中で何が重要かを認識し、それを新しい環境へどう移し替えどう取り入れるかを把握している人が必要です。

方位喪失――問題を先取りする

方向を求める気持ちは、問題を解く鍵を明らかにし、答えを見出し、情報を入手し、計画やアイディアを組み立てるために必要です。
方位喪失の人こそが、重要な問題に先に辿り着いたり、問題を先取りしてみせたりします。

憤慨――問題の所在をはっきりさせる

憤慨は、問題を全員の前で明らかにします。またいったん吹き出すとみんなもスッキリします。

反応を識別する

変化に対するあなた自身の最近の反応を自己評価してみましょう。

  1. 自分の目をカメラにしてここ二、三週間のあなたをビデオに収めたとします。そのビデオには何が映っているでしょう。何が見えるでしょう。何が聞こえるでしょう。
  2. 誰か他の人がこのビデオを見たとしたら、その人はあなたのことを自己喪失だと言うでしょうか。それとも憤慨状態だと言うでしょうか。方位喪失、無関心でしょうか。その理由は何でしょうか。
  3. あなたはその変化や自分の周りで起こっていることをどう思っていますか。
  4. あなたは自分が自己喪失状態にあると思いますか。それとも憤慨、方位喪失、無関心でしょうか。その理由は何でしょうか。

自分の反応を「カメラの目」を通して見ることで、自分の態度を理解するのに新たな洞察が得られます。
これを行う過程で自分が示しているさまざまな反応に気付くことでしょう。

人びとの行動を観察したり、言葉やそれ以外の表現方法で伝えられるものに耳を傾けると、彼らがどんな気持ちでどう反応しているのかを理解することが出来ます。
それは、彼らの反応に対処するための第一歩を踏み出すことです。

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