[新版]アフターショック―――変化の時代の「痛み」を解決する知恵
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「アフターショック 第8章 変化に強い組織を作る」のまとめです。

終結期と過渡期は、一人一人の道を切り開く努力に支えられています。
しかし、いったん事態が前向きに動き始めると、他の人びととより緊密な関係を持ちながら組織を挙げて同じ目標に向かうようになります。
そうなると個人的調整に苦心していたそれまでの段階は終わり、組織文化を皆で効率的に変えていきたいという望みに取って代わられます。
そのため、終結期や過渡期の個人的技術も、次第にグループを扱う技術に変わっていきます。

この段階で鍵になる問いは「どうしたら変化を乗り切るためのやる気が起きるか」です。

同じ方向、同じ目標を目指して皆が歩み始めたからといって全員が心を合わせてやり遂げようと決意しているとは限りません。
実際、終結期の怒りや憤慨、裏切られたと言う思いや無視されたという感情を引きずっている人びとの信頼を回復し、協力を獲得するのは並大抵のことではありません。

自分たちの会社が成長期のどの段階に居るかで人びとが参加者になる理由が違ってきます。
形成期の会社では起業家精神と冒険が不可欠な要素です。社員は会社の儲けは自分の儲け。参加意識は存在して当然と考えます。
定常期になると、そのような気持ちは失われてしまいます。挑戦の気風はルーチンの管理や効率化の追求に変わってきます。
物事を達成するのに必要なのは、真剣な参加者意識ではなく、システムへの忠実さになります。
そもそも定常期の会社員は参加者意識が何かを忘れています。そのため会社が統合期に入ったときに困難を乗り切るのに最も必要なものの一つを思い出せません。

新生期で必要な戦略は、形成期の戦略と似ています。
この時期は起業家精神に溢れた個人を支援するのではなく、「起業家チーム」とでも言うべき複数の人びとを生み出すことが大切です。
必要なのは一人の先見の明ではなく、共通の目的とビジョンを持ったグループです。
社内に実行力のある少人数だが核になるチームを幾つも作り、同じ方向に向かわせることが優先されます。

そのために会社が使う方法の一つがセレモニーです。

シンボルとセレモニー

変化が起こると、会社はイベント、新しい使命をまとめた文書、新しいロゴマークなどのシンボルによって古いものを締めくくり、新しいものをスタートさせようとします。
シンボルが効果を現すのは、シンボル自体に変化と発展の余地があり、人びとの参加が求められるときです。
ポスターやスローガンのようなシンボルは静的で表面的です。広報部で考案されたようなトップダウンのシンボルはせいぜい飾り付けにしかなりません。

シンボル作りに社員が参加し、自分たちのものだという気持ちを持てると成功の確率は高くなります。
最善のシンボルは、自然発生的に組織の内部から湧き上がってくるものです。
新生期にはことさらシンボルをひねり出そうとせず、自然発生したシンボルを発見し、それを後押しするのが賢い方法です。

人間は生まれつきシンボルを作りの名人です。この才能を押さえつけると否定的なシンボルの考案に向かいます。
変化に対応する準備が整っていないときなどには、このシンボルは必ずしも前向きのものでは無いかもしれません。
それでも少なくとも変化に立ち向かう気概を表す強力なシンボルを考え出すものです。

組織の価値観とシンボルとの関係

変化する組織の中で変わらないものが有るとすると、それは組織の価値観です。
しっかりとした価値観は、終結期から過渡期を経て新生期に移っていく過程を支える大黒柱の役割を果たします。
また価値観は絶えず形を変える目的を貫く糸のような役割を果たします。

価値観はシンボルによって具体的に表現されます。しかしシンボルが価値観と矛盾するようになればシンボルの意味は失われます。
詰まるところ、変化の時期に組織のリーダーの個人的な姿勢が成否を決定づけるシンボルになります。
皆が注目し記憶に留めるのは、リーダーの管理能力よりもその姿勢を象徴的に示す行動です。
トップの誰かが価値観と矛盾した行動を取ると、それが否定的なシンボルとなり、もう誰もこの変化に真剣に取り組もうとはしなくなります。

新生期に大切な行動

新たなプロジェクトが始まったとき、誰もがまず着手することは何でしょうか。

一般的に新生期にすることと言えば、計画する、訓練する、伝える、やり方を決める、責任を分担する、管理責任を決める、水準を上げる、情報を得る、監視する、調整する、編成し直す、重点項目を決める、会議を計画する、期限を定める、予算を立てる、あらゆる資源を動員する、などでしょう。
これらの活動は全て「計画」と言う一般的なカテゴリーにまとめられます。

「ビジョン」と言う言葉を耳にするときにどんな言葉を思い浮かべるでしょうか。
理想、色彩、全体像、投影、インスピレーション、将来、絵画、幻想、心の目、試行錯誤、願い事、希望、イマジネーションなどでしょうか。

ビジョンのリストにある言葉と計画に関する言葉を比べてみましょう。

計画のリストは、どちらかというと細かいことや踏むべき実際のステップと関連しています。具体的で厳密、厳格、現在に重点を置く傾向が有ります。
ビジョンのリストは、より総体的、啓発的、頭に思い浮かべやすい。抽象的で開放的、柔軟で将来志向です。

計画をビジョンに見せかけてはいけない

ビジョンと計画は相互依存の関係にあり、両方とも必要です。計画のないビジョンは単なる夢想です。ビジョンのない計画では先行きが分かりません。
順序を言えばビジョンが先に来て、計画がその後に続きます。ビジョンは人を引っ張り、計画は人を後押しします。

上司が「私のビジョンはこれだ」と言って部下に計画を提示することがあります。
「これが私の夢だ。細かいことは全部ここに私がやっておいたから君たちはやるだけで良い」
この状況で部下たちは引っ張られているのでしょうか。それとも押されているのでしょうか。明らかに押されています。

計画をビジョンに見せかけようとしてはいけません。なぜそういうことが起こるのでしょうか。

時間とエネルギーの節約

こちらから計画を示すのは簡単です。他の人たちの時間やエネルギーを消耗させません。部下は既に負担が掛かりすぎています。
変化に襲われている非常時こそ良いビジョンが必要なのですが、ビジョンを生み出すのが最も難しい時期でもあります。

部下を信用出来ない

管理者は重要な決断は全て自分が責任を持って下すべきだと固く信じています。
部下たちの貢献出来る能力を過小評価し、自分の他には全体的な計画を立てられるものなど居ないと思っているのです。
しかし、部下たちもグループとしてまとまれば素晴らしいアイディアや体験を共有し、惜しみない協力をすることが出来ます。

指揮権を明け渡したくない

多くの管理者は自分の指揮権を明け渡すと、自らの権威の重要な部分を奪われると感じています。
指揮権にこだわり自分で指揮を執っているつもりでも、実際はあれこれ抱え込みすぎて、事態を掌握出来ず、ストレスに押しつぶされている管理者も多いです。

ビジネスライクにやろうという強迫観念

ビジョンという曖昧なものを推奨することをためらう管理者も多いです。
彼らの上司たちが彼らを評価する基準も計画の具体性です。
綿密性に欠けるものを拒絶する雰囲気が職場にはあります。

ビジョンと計画は両方とも必要

管理者がビジョンではなく計画を作る方に走ってしまうことで、部下は惜しみない協力の代わりに追従的な態度を示します。
追従で得られるのは、給料分だけの切り売りされた労働時間です。社員は全力を出すことを控えて単に働くだけになります。

ビジョンとは向かうべき方向であり、計画とはそこに辿り着くための方法です。
建築で言うとビジョンは完成見取り図や模型、計画は図面のようなものです。模型があれば建物をいろいろな角度から見ることが出来ます。
実際に建築家もまずは絵に描かれた完成見取り図や模型を使います。それは次のような理由からです。

  • 自分が何を手に入れようとしているのかが分かりやすい
  • 最終的な結果を実際に見ることが出来ればプロジェクトにコミットしやすい
  • 施主が設計段階で参加でき、変更や提案がしやすい
  • 建築家と施主の両者が協力してアイディアを練ることが出来る

図面(計画)ではなく見取り図(ビジョン)によってどんな建物を建てるのかを決断することが出来ます。
ところが組織は新生期に飛びつこうとするように詳細な計画や実行方法に飛びつこうとしがちです。
計画や実行方法を最初に示してしまうと、無理に部下を変化の中に押し込んでしまうことになります。

ビジョンは磁石のようなものです。ビジョンをうまく作り出せれば人びとを新しい方向へ引きつける有効な力になります。
ビジョンは全体性を産みだし、その中で自分の姿を見せてくれます。
ビジョンには柔軟性があり、自分もその一員としてビジョンのありように手を加えられます。
またビジョンは開かれていて空白の部分を埋めることが出来ます。

概念志向のビジョンと五感志向のビジョン

ビジョンには概念に訴えるものと五感に訴えるものが有ります。
ビジョンが効果的であるためには五感に訴えるもので無くてなりません。
効果的なビジョンは優れた物語のように五感を使って人を引き寄せます。これらは思考ではなく経験の全体を描き出します。

「高い業績を上げるチームとして働く」という表現について考えてみましょう。
高い業績を上げるチームとはそもそもどんなチームでしょうか。どのように見え、何が聞こえ、どういうふうに感じられるでしょうか。
このようなチームの一員になりたいと言う動機にはどんなものがあるでしょうか。

五感思考のビジョンに効果があるのであれば、なぜもっとたくさんそういう表現が使われないのでしょうか。
概念は即時的な伝達方法として効果的です。短い文章でかなりなことを表現出来ます。
しかし、概念を感覚で把握出来る具体的なものに翻訳する必要があります。

医者に行って「どうも弱っているんです」と言うだけでは十分ではありません。自覚症状を具体的に話さなければなりません。
同じように「良い接客」では不十分です。もっと具体的に表現しなければなりません。

一般にビジョンを作り出すというのは全体を作り出すことです。各人が自らを見出せるような全体です。
この全体が情景であったり、姿勢であったり、感情であったりします。人はこれをキャッチし自分の仕事や生活に即して咀嚼し、拡張し、肉付けし始めます。

ビジョンの素晴らしいところは全員に共通のイメージを与え、計画と手順が確立したときにもたらされる結果を理解させてくれることです。
ビジョンは将来に焦点があり、人を過去から引き離し将来にコミットさせます。
自分が望むものをビジョンに表し、絵を描くことで、結果に拘泥しすぎるために起こる問題を最小限に抑えることが出来ます。

新生期を成功に導く戦略

新生期を成功に導くために欠かせない人間関係や状況設定を中心にまとめます。
これは会社が定型的な成長段階に入ったとたんに忘れ去られてしまう技術であり、その段階を越えてさらに成長するときに生き残りの手段になる技術です。

シンボルとセレモニーを奨励する

変化の最中には思いがけないところからシンボルとセレモニーが生まれます。
それは変化を支えることもありますが変化に逆らうこともあります。どちらもその時点での会社の雰囲気を反映しています。
噂や不満は否定的で風刺的なシンボルやセレモニーとして現れます。その場合、会社はそれがどんな影響を与えているかに注意しなければなりません。

シンボルやセレモニーには非常に強い効果があるので、組織は変化を起こすためにシンボルやセレモニーを作り出そうとすることがあります。
組織はシンボル的なスローガンを作ることがよくありますが、このようなスローガンはそれだけだと単なるレトリックに過ぎません。
積極的に効果を出そうとするならば、会社はリーダーシップを発揮し、何らかのシンボル的な行動によってスローガンを徹底させなければなりません。
そうしないならば、スローガンは単なるかけ声、それどころか会社にとって厄介なものに変わってしまうかも知れません。

シンボルやセレモニーを作ったら、会社はそれを必ず何らかの行動で援護しなければなりません。
また、シンボルやセレモニーは作られた瞬間から自分たちの手を離れることを理解しなければなりません。
会社がそれをどんなに押さえつけようとしても、ある特定の意味だけを持たせようとしても、徒労に終わります。

普遍の価値観を持ち続ける

変化の最中には組織が尊重する価値観が非常に重要です。
会社が価値観を常に持ち続け、それを堅持することを誰の目にも明らかにする姿勢が重要です。

価値観を維持しその堅持を表明するのを妨げるものが有ります。それは形式と目的の混同です。
会社の価値観は目的です。変化以前の組織が形式になります。
形式が変化すると人びとは往々にして目的も同時に変わったと受け取ってしまいます。

経営者たちは、変化を経験し組織の形式が変わっても、会社の価値観(目的)は変わらないと社員も知っているはずだと考えがちです。
ところが社員は形式の変化は目的の変化だと考えて、それを裏付ける確証を求めようとします。

管理者はこの誤解の可能性に注意を払い、価値観が揺らいでいないことを示すために何らかの手段を講じなければなりません。

新しい始まりを象徴する人びとを見出す

新生期では新しい出発を最も相応しく代表する人物を見出すことが重要です。
新しい出発に向けてすでにスタートを切った人びとの中心に居る少数の人物を探し出し、彼らを支援します。

活発なコミュニケーションの体制を作り上げる

新生期には人びとが口を開いて話せるような開放的な考え方を植え付けることが不可欠です。
新生期をうまく乗り切るためには、垂直方向にも水平方向にも、あらゆるレベルで開かれた情報伝達を奨励するような組織的体制を整える必要があります。

高業績チームを作り上げる

人は自分が全体の中で不可欠な存在なのだという実感を求めます。
人は管理によって動くのではなく、リーダーシップによって動きます。
そして自分の存在が全体に違いをもたらしているという確信が必要です。

ビジョンによって将来に目を向ける

効果的なビジョンは

  • 高水準が期待され、エネルギーが注ぎ込まれ、全員が結集出来る中心をもたらします
  • 人びとを一致させ、奮い立たせ、一層の努力へと向かわせます
  • エネルギーを部分にではなく全体に、そして結果に向かわせます
  • 高い教育を受けた新入社員たちを仕事に参加しようという気持ちにさせます
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