[新版]アフターショック―――変化の時代の「痛み」を解決する知恵
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「アフターショック 第6章 CSEサポートシステムの知恵」のまとめです。

スムーズに集結期を終え上首尾の新生期を迎えるためには、過渡期に時間を取ることが必要です。

終結期を処理するプロセスは、どちらかというと動きが少ないものです。
「変化が自分と部下にどういう影響を与えるか」と言う終結期の問いは、対象が静止していると仮定した場合のものです。
過渡期の問いは、自分自身を、あるいは周りの人をどうすれば新生期に向けて動き出させることが出来るかです。とにかく動き出すことが目標です。
全員の問題を解決することなど出来ません。問題を解決するのではなく、障害を取り除き、サポートを提供し、方向を確立しようとすることです。

既に述べたように、変化に遭遇している人は三つの基本的ニーズを持っています。

  1. 共感:耳を傾けてくれる。感情や考えを自由に表現させてくれる相手
  2. 情報:何が起こったのか、何が起ころうとしているのかを知的理解している手応え
  3. アイディア:次に進むための具体的な提案

これらのニーズを満たすことを助けるために考えられたスキル――CSEサポートシステム――を紹介します。

CSEサポートシステムの概要

  • Clearify――明確にする:失ったと思っているものと真の願望を明確化する
  • Share――共有する:変化によって得られるものと変化の目的を分かち合う
  • Engage――参画させる:変化を受け止め、変化の対応する行動を起こさせる

明確にする――共感に対するニーズを満たす

  1. 耳を傾ける――相手の持つ疑問や心配事、不平、意見、そして心情に、積極的に耳を傾ける。聞いた話に基づいて彼らが失うことを恐れているものや得たいと望んでいるものを明確にする
  2. 焦点を合わせる――変化の状況に当てはまる問題に的を絞る
  3. 言い換える――彼らが納得出来るように聞いた話の内容をまとめ上げる

共有する――知的理解に対するニーズを満たす

  1. 役割の交代を知らせ、目的を説明する――こちらが聞き手から話し手へと立場を変える旨を相手に知らせる。次に変化を説明し、その後、変化を相手の心配事やニーズと結びつける
  2. 変化を概観する――新しいシステムはどのようなものなのか、またそのシステムにおいてどのような新しいポジションやチャンスが相手に与えられるのかを説明する。但し簡潔にすること
  3. 相手の心配事と結びつけ一つずつ片付ける――全体的に見て来た事柄から相手の心配している事柄を個別に取り上げる。相手の心配している事柄が解消されるかされないか一つずつ見ていく。もし解消出来るかどうか分からない場合はそう伝える

参画する――第一歩を踏み出すというニーズを満たす

  1. 理解と同意を求める――ここまで話してきた内容を両者が納得していることを確かめる。
  2. アイディアについて話し合う――相手にアイディアを出すように求めていく。価値判断を下したり評価してはならない。時にはこちらの意見を述べる
  3. 具体的実行案に同意を取り付ける――両者が良いと思うアイディアを決定し、実行案を作成する

CSEサポートシステムには大きく二つの段階があります。
第一は明確化の段階です。この段階は「相手」の心配事に焦点を合わせます。
第二は共有と行動を起こさせる段階です。この段階は「こちら」が新しいシステムや計画を説明し、相手がその中で積極的に行動し貢献するように仕向けるチャンスが与えられます。

この第二段階が上手く行くかどうかは、明らかに第一段階に掛かっています。
相手の話によく耳を傾け、信頼関係を築き上げていなければ、分かち合うことも行動を起こさせることも出来ません。

CSEサポートシステムはシンプルですぐに行動に移すことが出来ます。
しかし、これを問題に対する即席な解決法と見なすなら失望するでしょう。理解することとやり遂げることは別の問題です。

第一ステップ――明確にする

第一ステップの目標は、自分の恐れているものが何なのか、自分たちの利益が何なのかを明確にすることです。
このステップには「耳を傾ける」「焦点を合わせる」「言い換える」の三つが統合された形で含まれます。

耳を傾ける

耳を傾けるというのは、自分で自分に対して行うにしても、同僚や部下に対して行うにしても、過去の執着を断ち切るのを助けるプロセスの重要な一部です。
人びとが過去との絆を断ち切ることに困難を覚えている変化の中では、語られたことと語られなかったことの両方に積極的に耳を傾ける必要があります。
耳を傾けるということは、変化のプロセスにおいて、おそらく最も重要な技術です。

耳を傾けることは受け身の技術と思われがちです。
しかし、相手が何を言っているのか、そして何を言っていないのかに集中するにはエネルギーが必要です。
コミュニケーション、特に耳を傾けると言うことは行動であり、その方法を教えることも学ぶことも、変えることも改善することも出来ます。

人を変えようとするとき、変えようとする側は80パーセントの時間を話すために使い、相手の言い分に耳を傾けるのに使う時間は20パーセント足らずだという研究があります。
相手の反対意見に耳を傾け、より説得力のある論拠を築き上げる土台を提供していく方が効果的です。

演習

  1. 誰か相手を見つけて、最近の出来事(事実と感情の両方を含んだ事柄)について話し合うことを依頼する。
  2. 相手に数分話してもらい、それに耳を傾ける。
  3. 相手に納得のいくように話されたことを要約し、相手に投げ返す。
  4. 役割を交代して今度は自分が相手に話を聞いてもらう。

この演習の結果、聞き手は次のような発見をするでしょう。

  • これはハードワークだ
  • 相手の話に含まれる事実と感情をすべて受け止めないといけないと思うと緊張する
  • 頭がフル回転になる
  • こんなに集中して耳を傾けることはなかった

一方で、相手が話を要約して投げ返してきたとき、どんなふうに感じたでしょうか。
誰かが自分を理解しようと努力してくれ、自分の話したことを投げ返してくれるのを知っておそらく良い気持ちになるでしょう。
そういうことはそう頻繁にはありません。これは普通に耳を傾けるというより一歩進んだことです。

話し手のそれとなく示されている感情表現が、聞き手の要約のプロセスの中でより明確に示されることがあります。
話し手と聞き手のコミュニケーションの中で、ある感情を表現する言葉を見つけだそうとする知的な努力がその感情を理解する助けとなります。

未知のもの、ぼやけているものを明らかにし、何事も当然と思わない、決めつけて掛からないと言うことは重要です。
変化に伴う多くの問題は、噂、誇張した表現、決めて掛かる姿勢、はっきりしない感情と言った形を取った未知のものに対する不安から生じています。
感情に名前を付け、決めて掛かる姿勢や誇張した表現を問い直すことによって、問題は何なのかを知ることが出来ます。

焦点を合わせる

焦点を合わせるとは、単に範囲を狭めるだけではなく、その人の反応の核心部分にある問題点を選び出すことです。
そのためには、自己管理プロセスで使った二つの質問――何を失うことを恐れているのか、何を手に入れたいのか――を用いるのが最もシンプルで効果的です。

「何を失うことを恐れているのか」という問いによって、ある恐れには根拠のないと言うことが明らかになり、現実的な裏付けのある恐れを取り上げることが出来ます。
「何を手に入れたいのか」という問いにどう答えるかによって、その人が変化の物差しでどこに位置するのか、そしてスタートに向かって動き出すのがどれだけ困難かがよく分かります。

耳を傾けることと焦点を合わせることで最も難しいのは、自分の考えを持ち込まないようにすることです。
問題や心配事、あるいはチャンスを相手が明確にするように手助けをすることが目的です。教えたい、目を開かせたい、同意したくない、矯正したいという誘惑に駆られるかも知れませんが、決してそうしてはいけません。
共感を示し、相手が理解を進めていくようにするべきです。それを短縮しようとすると新生期に飛びつく過ちを犯すことになります。

言い換える

実際のところ、人は自分が何を言おうとしているのかはっきり分かっていないことが多いものです。
自分が話した内容を他の人が言い換えてくれるのをあらためて聞くことによって、自分の本当の関心事が明確になってきます。

耳を傾けると言うことの真価が問われるのは、話し手の納得のいくように言い換える、あるいは要約するところにあります。
それは話し手と聞き手の間に、変化する環境で必要な共感をもたらします。

第二ステップ――共有する

共有するとは、今起こっていることを自分がどう理解しているかをそのまま相手に伝えることです。
明確化のステップでは、話し手に焦点を合わせていました。今度は相手の利益がどのように会社の目的と適合するのか、その理解を手助けする仲人のような役割です。
相手が口にした利益に関連付けて変化の目的を伝えることで、状況の見え方が変わり、説得力を持つようになります。
これによって目的に焦点を合わせ、変化から何が得られるのかを発見する道が開かれます。

共有には三つのステップがあります。

役割の交代を知らせ、目的を共有する

明確化の段階では、相手が話しこちらは耳を傾けていました。
ここでは立場が逆転し、こちらが話をすることになります。

今からこちらが話すこと、そしてその理由(目的)を説明しなければなりません。
次になぜ変化するのか、どのように変化するのか、とりわけ相手が表明したニーズにそれがどう関係しているのかを説明したいと告げます。
「なるほど君の気持ちは理解出来たように思う。どうだろう。ここで少し、今進行中のことで君が気にしていることにも関係がありそうなことを幾つか説明させてもらいたいんだが」
こちらが共有することと相手が話したことの辻褄が合っていなければなりません。そうでなければ耳を傾けて話を聞いてきたことが上辺だけの見せかけに過ぎなかったことになります。

変化を概観する

変化を簡単に振り返ります。アウトラインで十分です。
共有の目的は相手の心配事について話すことであって、こちらの意見や考えを長々と述べ立てることではありません。
単純化して言えば、共有のプロセスは本質的には「相手が表明した恐れや希望」と「こちらが知る限りでの変化に関する事実」を統合していくプロセスです。
良いことであれ、悪いことであれ、何も変わらないものであれ、恐れに対しても望みに対しても事実をもって応えることが大切です。

相手の心配事と結びつけ、一つずつ片付ける

相手が得たいと思っていることと変化の新しい方向性を関連付けます。
このステップが省かれると、自分の心配事に関心が向けられていないと感じるでしょう。
また、評価したり批判することは避けるべきです。こちらが「もっと良いアイディア」や「唯一の解決法」を示唆するならば、これまでの努力が無駄になるだけでなく、思いもよらなかった良いアイディアを排除してしまうことにもなりかねません。

第三ステップ――参画させる

明確にすることと共有することが効果的に行われていれば、その変化を自分のものとして受け取る心の準備が相手の中に出来ていることでしょう。

第三ステップでは、変化を自分のものとして受け取り、新生期に向かう決意を相手から引き出します。
行動を起こす決意を引き出せなければ、目的を達成したことにはなりません。
そして、当事者が変化に向かって動き出せるように、将来に焦点を合わせた実行案を作成します。

理解と同意を求める

共有の段階を締めくくり次に進む前に、相手がこちらの話に付いてきているかどうかを確認します。

「今まで話し合ってきたことで不明瞭な点はありませんか」
「今からこれを実際に処理していくにあたって、この変化があなたの関心事とどう関わっているかについても理解してもらえましたか」
「話し忘れたことはないですか」

アイディアについて話し合う

相手のアイディアを引き出し検討します。そのアイディアを尊重し、評価したり巧拙を論じたりしないようにします。
「次に何か実行出来るアイディアが思い浮かびませんか」

具体的な実行案に同意を取り付ける

どのアイディアがベストであるかを決定し、一つの実行案に同意を取り付け、それがどこまで進んだかをチェックするために次に会う日を決めます。
この時点では行動する決意を引き出すことが不可欠です。ある種のフィードバックを継続したりモニターする仕組みを整えておくことも有効かもしれません。

変化の遭遇したときは、あえてこちらから大きなマスタープランを提示する必要はありません。行動計画に過大な期待を抱かないことです。
それでなくても相手にはやるべきことが多いものです。次のステップを確認するだけにした方が良いでしょう
また、変化の最中にはどんなマスタープランも変わっていきます。それまでの努力が無駄になることもあります。
このように心理的理由、実際的理由からそのような大きなマスタープランを立てるべきではありません。

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